ふと気がつけば交差点に突っ立っていた。車は通ってない。
広い広い大都会の交差点は、空一面が淡いピンク色の中で静かにあった。それが別におかしいとか奇妙とか、そんなこと思わなかった。
信号機は全部赤。これがこの世界では当たり前。
1+1の答えが2であることくらい当たり前の規律なのである。
一歩。足を踏み出すと、じゃりというアスファルトの音。また足を踏み出す。それを繰り返せば「歩く」という行為になっていた。
どこに向かうなんて検討も無い。ただただ歩くことだけしか頭にない。
空に浮かぶ雲は、一面を覆う淡いピンクよりもっと淡い。もこもこしたくもが幾つも浮かんでいて、あれの上に寝そべれたらさぞかし気分がいいだろう、と思う。
足はやがて等間隔に塗られた白線の上を渡りきり反対側へ来ていた。
この「世界」は自分だけの世界。
自分しかいない、即ち自分の思い通りに動く世界。
静かが好きだから周りは静か。
信号機なんて全部赤になってしまえば事故なんておこらずにすむ。
もっといえば車が、もっともっと言えば人なんていなければ。
空が青くないのはどうしても最愛のあの子を思い出すから。
そしてあの子でさえこの世界に立ち入ることを許されないのは自分の意思であり、他人の意思でもある。
こんな「世界」はあの子に見られたくない。
満足げに一人で笑って人のいない街を悠々と歩く。
そよりと涼しい風が吹き抜ける。そろそろ夜が来る。
夜が来たらこの世界とはお別れだ。
名残惜しい反面、さっさと夜になって欲しかった。
あぁ、夜はあとどれほどの時間をかけて常闇をつれてきてくれるのだろうか。
古びた部屋の一角で、そんな彼の「世界」を眺めてる青年がいた。
青年は金色の癖の強い髪の毛の持ち主だった。ふふふ、と笑って「世界」を眺める。
そろそろ時間ですねと呟いて部屋の明かりを消した。
翌朝目覚めた彼は、真っ先に愛しい彼の元へ向かう。
今日の空の様な髪と瞳を持つ彼の元へ。
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